採光計算

バルコニーがある場合の採光計算ってどうすればいい?【図で解説】

  • バルコニーがある場合の採光計算ってややこしい
  • どのように考えたら良いのか教えて欲しい

このようなお悩みをこの記事では解決できる内容となります。

そんな私が詳しく解説していきます。

バルコニーがある採光計算の注意点

まずバルコニーの採光計算での注意点ですが2点あります。

  • 採光補正計算
  • 開放性の問題

上記の2点をおさえておくと、今後のバルコニーの採光計算がスムーズに行えます。

では順にご説明していきます。

採光の計算式

採光計算とは、法28条1項の定められている

住宅、学校、病院等で政令で定めるものの居室(住居のための居室その他政令で定める居室に限る)には、採光のための窓を設け、採光に有効な部分の面積は床面積に対して定められた割合以上としなければならない。

とあります。

要するに、部屋を設けるときには、窓を設けて一定数以上の光を差し込むようにしてね!ということです。

そのため、採光を確保するためには計算で定められた数値以上にしなければなりません。その計算がややこしいのです。順にご説明しますので、ついてきてくださいね。

少し余談ですが、採光はALVSのLの部分の計算です。

ALVSって何??って方は下記参考をご覧ください。

ALVSとはAが居室の床面積でLが採光計算、Vが換気の計算、Sが排煙の計算となります。確認申請ではこのそれぞれを計算して図示する必要があります。(緩和などで全て必要になるわけではありません。)今後ブログで解説していく予定です。

採光の計算式

それではここから採光の計算方法を解説していきます。採光の計算式は下記の通りです。

窓の面積×採光補正係数≧居室の床面積×1/7

文字だけでは、さっぱりわかりませんね。分解して見ていきましょう。

  • 窓の面積
  • 採光補正係数
  • 居室の床面積

1/7はあくまでも住宅の場合です。ただ、ほとんどが1/7ですが、病院や診療所などは1/10保育園や学校等は1/5で計算する必要があります。(緩和あり)

窓の面積

窓の面積は簡単です。窓の高さ×横幅で計算できます。例えば掃き出し窓の横幅が1.8m、高さが2.0mであれば窓の面積は3.6㎡となります。

窓が複数あると、採光計算にはプラスになります。

居室の床面積

先に居室の床面積を解説します。

居室の床面積は柱、壁芯で取り、クローゼットやキッチン・廊下等を省く面積となります。(省く場合は明確に分かれている必要があります)一体空間であれば、残念ながら全てを面積に含めないといけません。その辺りは検査機関にご相談してください。

採光補正係数

採光補正係数とは、採光計算に乗ずる値で用途地域によって変わります。

ざっくりと分けると

  1. 住居系
  2. 工業系
  3. 商業系

となります。表でまとめましたので、ご参照ください。

住居系第1種低層住居専用地域、第2種低層住居地域、
第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、
第1種住居地域,第2種住居地域、準住居地域
工業系準工業地域、工業地域、工業専用地域
商業系近隣商業地域、商業地域、用途地域指定のない地域

計画地がどの用途地域になるのかをチェックして、その用途地域の計算式にはめ込んでいくという流れになります。用途地域ごとの計算式を解説していきます。

採光補正係数の求め方

住居系D/H×6-1.4
工業系D/H×8-1.0
商業系D/H×10-1.0

D:開口部から境界線までの水平距離
H:直上部の建築物の部分から開口部中心までの垂直距離

こちらが採光補正計算の求め方です。

  • 天窓の場合は、算定値の3倍の数値となります。
  • 開口部の外側に90cm以上の縁側等がある場合は、算定値の0.7倍の数値
  • 数値が3を超える時は、数値は3とする
  • 逆にマイナスになる場合は0になり、算定できない。
  • 道路側は緩和があり、補正係数1以上となります。1でクリアするのであれば補正計算しなくてOKです

ここまで理解できなくても、大丈夫です。下で例を踏まえて解説していきますから安心してくださいね。

この内容を、先程の上にて説明しました採光計算の式に当てはめていく感じです。これが採光計算となります。

ちなみに、計算を見てわかる通り、住居系が一番厳しい基準となります。採光をしっかりと入れた設計にしなさいよってことですね。

採光の詳しい計算方法を別記事で説明してます。

開放性とは?

バルコニーのある採光計算で大事になってくるのが開放性の有無。開放性のあるバルコニーであれば、採光の計算は通常通り行うことができます。(すごく厳しい検査機関でダメと言われたことはありますが)しかし、開放性がない場合採光計算が通常通りではいかなくなります。

その開放性の決定付ける計算方法があります。

実は、計算はすごく簡単で床から天井までの高さから開放している部分が1/2以上あれば、「開放性がある」とみなされます。下記の図で詳しく見ていきましょう。

ちなみに開放性がない場合は、床面積に含める必要がありますので、面積計算も注意が必要ですね。

採光計算バルコニー開放性なし

この図の1階の場合、高さ3,000に対して、3,000の1/2以上は1,500開放されていれば、開放性が有るとみなされます。しかし、開放されている部分が1,050なので、開放性がなしとなるわけです。

2階も同様に1/2以上開放されていませんので、開放性なしとなります。

少しでもバルコニーの立ち上がり部分が上部のバルコニーとズレている場合は開放性があるとみなすところもあります。例えばこういった事例です。

先ほどと同じく1/2未満ですが、今回は上部が開放されているため、開放性ありとみなすことができます。

検査機関によって違います。厳しいところであれば、アウトと言われたり、斜めの計算を求められます。

ただ基本的には、開放性を有りにしたい場合は、1/2以上開放しておくようにしましょう。

開放性がないとどうなる?

開放性がないと窓の全面を計算することができません。

また、開放性がない場合は床面積にも参入する必要があるのです。
こちらは採光に関係ありませんが、開放性がないと面積に参入しなければいけません。

では開放性がない場合はどのようにすれば良いのか。

開放性がないと窓が開放されている部分しか面積計算できません。取れる居室の面積が少なくなります。
そうなると、採光がギリギリ、もしくはアウトになってしまいかねません。

採光が足りない場合の対策があります。

  • 他で窓を設ける
  • 足りない場合は納戸として申請
  • 居室を縮める
  • キッチンを面積から除外する
  • 透過性のフェンスを使う

上記の方法があります。

他で窓を設ける

現在の窓で最高が足りなくなった場合、一番無難な方法は、窓を採光が取れるところに設けることです。計算や計画の訂正があり面倒とはなります。

納戸・クローゼットとして申請

居室ではない場合採光の計算は不要です。なので納戸やウォークインクローゼットとして申請することで、採光計算する必要もなく、クリアすることができます。ただし、納戸なので、あくまでも物置としての利用となります。(納戸として申請して居室で使っているところはよくある)

居室を縮める

居室を縮めることで、計算の範囲内にする方法です。計画がガラッと変わりますので、訂正がとても大変となります。

キッチンを除外する

居室の面積にキッチンを含めていれば、面積から除外することができます。

もちろんそのキッチンが明確にわかるのであればOKですが、一体として空間を利用していると検査機関によってはNGとみなされます。その場合は「タレ壁」や「天井をキッチンの部分だけ下げる」、「腰壁」や「袖壁」を設けるなどで検査機関さんと相談してみましょう。

透過性のフェンスを使う

透過性のあるフェンスを設けることで採光に有利となります。

光が入ってくるような透明なフェンスもしくは半透明で光を通すフェンスであれば採光を窓の面積の全面、もしくはフェンス部分を計算することができます。

これによって取れる採光が増えるので、一番手っ取り早いやり方となります。

外部に格子を設けて窓が隠れてしまった時はどうなる?
おしゃれに外部に格子を設ける場合も上記と同じで、1/2以上開放する必要があります。

僕が経験した中で一番厳しい検査員は、「開放性あり」でもバルコニーの立ち上がりが窓にかかっていればその部分だけ採光計算から省いて計算しなさい。ということを指摘してきました。実際採光クリアしていたためよかったものの、そんな人に当たれば、最悪ですね。

実際の例:採光計算をやってみよう

実際に採光計算の例を見ていきましょう。注意点としては下記です。

  • 開放性の有無の計算方法
  • バルコニーの突出した場合の計算
  • 一番厳しいところを計算
  • 軒の出から境界までの距離

ちなみに境界までの距離が一番厳しいところが、計算すると不利になる場合が多いです。樋があれば、樋からの距離で計算しましょう。

開放性のあるバルコニー

バルコニー部分の採光計算断面図

この図の2階ように解放性がある場合は通常通り計算します。Hの「上部の建築物の部分から開口部中心までの垂直距離」は軒の出の部分で1.69m、Dの「開口部から境界線までの水平距離」は軒の出の部分2.00mとなります。

採光計算例

住居系の計算式に当てはめます。

2階の計算

まず初めに、採光補正係数(a)を求めます。

a= D/H×6-1.4の計算式にD=2.00 H=1.69を代入
a=2.00/1.69×6-1.4
a≒5.70
採光補正係数の最高値は3なので、3とする
∴a=3

次に有効採光面積(L)を求めます。

窓の面積×採光補正係数(a)より

1.8×2.0×3=10.8
L=10.8となる

L×7が居室の面積以上であれば採光クリアとなります。

10.8×7=75.6は15㎡より大きいためOK

このように計算していきます。

計算式は平面図に記載するといいでしょう。

開放性のないバルコニーの採光計算

上の図の1階のように開放性がない場合の計算

採光計算例

上記の1階ように開放性がない場合は厳しい条件となります。
そのため、フェンスを透過性のあるフェンスにすることで採光計算を有利に進めることができます。

この場合は水平に線を引いたところから窓の面積を取ることができます。

1階の計算式

今回の場合解放部が1.41mとなりました。計算は上記と同じです。

採光補正係数(a)を求めます。
a= D/H×6-1.4の計算式にD=2.00 H=4.395を代入
a=2.00/4.395×6-1.4
a≒1.33
採光補正係数は1.33となる
∴a=1.33

有効採光面積(L)を求めます。

窓の面積×採光補正係数(a)より
1.41×2.0×1.33=3.37554
L=3.37となる

L×7が居室の面積以上であれば採光クリアとなります。

3.37×7=23.59は30㎡より小さいためNG

今回は正確に解説するために少数第3位まで記載して計算してますが、2桁で計算することをおすすめします。

あまり、細かくなりすぎると計算がややこしくなる上、審査に時間がかかります。なるべく簡単にして検査の方の手間にならないようにした方が、済証の早さにも繋がります。

また、検査機関の方は見るからにクリアできる内容であれば、緩いです。しかし、ギリギリや怪しい場合にはしっかりとした計算を求められます。

バルコニーが突出している場合

2階のバルコニーが突出している場合は1階は補正係数を2通り計算して、厳しい方を採用します。2階は先ほどと同様の計算方法なので、割愛します。

バルコニー突出した断面図

図の場合バルコニーの上部が軒の出よりも出ており、その部分が開放されている形になっております。この場合は開放性があるとみなされます。

バルコニー突出採光計算

1階は図の通りです。2通り計算した結果軒の出の部分が厳しい数値となりましたので、そちらを採用します。結果は先ほどと同様となりました。どちらが厳しいか不明な時は両方とも計算して、図示する必要があります。

まとめ:バルコニーの採光計算はこうする

窓の面積×採光補正係数≧居室の床面積×1/7

採光補正係数の計算

住居系D/H×6-1.4
工業系D/H×8-1.0
商業系D/H×10-1.0

開放性の問題はこうやって解決

  • 他で窓を設ける
  • 足りない場合は納戸として申請
  • 居室を縮める
  • キッチンを面積から除外する
  • 透過性のフェンスを使う

上記の点を抑えていればバルコニーの採光計算はなんなくクリアできるようになります。ぜひ参考にして確認申請を進めてください。

以上です、最後までご覧頂きありがとうございました。

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